実績
当センターでのリハビリ症例について詳細な情報を掲載しています。発症からの期間、後遺症の程度を問わず、多くの方がご自身の改善目標を達成されています。
【動画あり】施設での食事時間に居室から食事席まで見守りでシルバーカーで歩けるようになった
この記事の監修者
保本 夢土
理学療法士
施設での食事時間に居室から食事席まで見守りでシルバーカーで歩けるようになった
改善内容
達成した目標
施設での食事時間に居室から食事席まで見守りでシルバーカーで歩けるようになった
レビュー
基礎情報
- ご病名
- 転倒後(2019.12)に体動困難から歩行能力低下および右膝痛悪化によるシルバーカー歩行困難。既往歴:左変形性肩関節症、右変形性膝関節症
- 具体的な症状
- 荷重時(特に歩行、移乗)の両膝痛、両膝の可動域制限(膝が100度以上伸びない)、右下腿から足指までのしびれ、両下腿の浮腫、左肩の痛み、両肩の可動域制限、腰痛、著名な恐怖心、恐怖心による疲労感
- 年代・性別
- 80代・女性
- 発症からの期間
- 1年2か月
- リハビリ期間
- 60日リハビリプログラム24回(1回60分)+2回目13回目の治療成果
- リハビリ目標
- 1.施設生活の中で歩行で移動できる場面を作り歩きたいという希望を実現し寝たきりおよび機能低下を予防する 2.立ち上がりの大変さを軽減させ生活の中で少しでも動きたいと思えるようにモチベーションを上げる 3.疼痛緩和(両膝、腰、左肩)
- 利用メニュー
- 60日リハビリプログラム
- 利用回数
- 現在、60日2回目の途中
当センターご利用までの経緯
- 屋外はシルバーカー、屋内は伝い歩きで移動可能。2019.12月に自宅で転倒。転倒後全身の力が抜けて1昼夜体が動かなくなり入院。右前頭葉梗塞と診断されるも麻痺はなく体動困難な原因となる部位はないとの事。独居で歩行困難なため自宅退院困難となりプレミアムハートライフ大岩に2019年12月21日に入所。
- 施設長の紹介でBOTを知り、脳梗塞以外も対応していると聞き体験に至った。
初回体験時の状況
- 座位は右側に少し傾き、円背、両肩関節・股関節・膝関節・足関節の可動域制限あり。膝は常に曲がった状態で背臥位でも力が抜けず常に力が入った状態。両膝を伸ばそうとするが痛みで伸びない(マイナス80度程度)
- 左側への寝返りは、自力ではできず介助でも恐怖心が強くでて焦って疲労感が強く出てしまう、また左肩の痛みも出現していた。
- 立位保持では、右膝の痛みが強いため、恐怖心が強く、それにより全身の筋緊張が高くなり、両股関節・膝関節が曲がり前も向く事が出来ず介助が必要であった。恐さの影響で自分の置かれている状況が判断できずそれがさらに恐さ・筋緊張を強め、1、2回立つと「あ~疲れた」と強い疲労感が出てしまっていた。
- シルバーカー歩行は介助下でも両膝の痛み、恐怖心のため1歩も歩く事が出来ず、運動すること自体が痛みに繋がるため運動の拒否が少しあった。一度恐怖心がでると疲労感が強くなり15分ほどで「まだやるの?」という声も聞かれた。
リハビリ内容
- 両足底(特に右)で体重を支える事が出来ず右膝に負担がかかっていたため、両足底で少しでも体重を支えることができるように目指した。(右体幹、右肩甲骨、右股関節、右足関節の右半身だけではなく左肩、左股関節、左足関節など左半身の可動性も増やした)
- 体の傾きの感覚が実際と本人の自覚とは差があり、恐怖心の原因の一つとなっていると考え寝返りの中で感覚を手がかりに動くことを学ぶことで感覚のずれを軽減することを目指した。
- 運動をやろうとすると、全身に力が入ってしまい体が思うように動かなくなるため、できるだけ感覚を手がかりに頑張らずに楽に動ける範囲を増やしていった
- 運動が好きではないため、お手玉を投げるなど本人の気分が乗る課題で、さらに下肢への荷重と前方への恐怖心を減らした
改善内容
- 座位は右側への傾きは軽減し、背臥位でも両膝の痛みはなくなり可動域は向上した。
- 自力で左側へ寝返る事が出来るようになり、傾きのずれは改善し左肩の痛みおよび恐怖心は軽減した。
- 両下腿の浮腫は相変わらずだが、起床時の腰痛も少なくなり右下腿、足底のしびれが軽減した。
- 立位は、何かを持たないと保持することはできないが、痛みはなくなり、左右に体重を移動でき足がしっかりした自覚もでるようになり恐怖心は軽減した。置かれている状況も分かるようになってきている。まだ長時間は疲労感で難しい
- 歩行時にも両膝の痛み、恐怖心の訴えはなくなり、施設での居室から食事席まではシルバーカー歩行で見守りで可能となった。本人も再び歩けたことを実感でき喜んで頂けた。
担当セラピストのコメント
この記事の監修者
保本 夢土
理学療法士
経歴:2008年に鈴鹿医療科学大学 理学療法学科を卒業し、理学療法士国家資格を取得。同年~2018年まで静岡県内の療養期の病院、介護老人保健施設に勤務し、慢性期の患者様に携わる。その中で脳血管障害に対する治療を中心に学び、脳卒中患者様を専門に携わりたいという思いから、2019年に脳梗塞リハビリBOT静岡に勤務。運動麻痺の改善に最善を尽くすこと、お客様の身体および精神的な悩みを共有し、少しでも表情が明るくなるよう心がけています。
A様は、元々運動が好きではないのに加え、両膝の痛みが強く、痛みが出るとそこばかりが気になってしまい運動すること自体が嫌になってしまっていました。また、痛みが出ると恐怖心や疲労感より強まり行動範囲やモチベーションが低下していました。両膝の痛みは移乗、歩行など特に足で体を支えないといけない場面で出ていました。本来であれば膝を伸ばす際は多くの筋肉が協力して働くことでスムーズに動くのですが、A様の場合は同じ筋肉ばかりが働きそこに痛みを訴えられていました。原因は、働いていない筋肉や働いている筋の筋力の低下だけではなく、全身の体のゆがみや筋肉および関節の硬さ、恐怖心の影響で上手く弱い筋肉を働かせることができていないのでないかと考えました。治療により、弱い筋肉が入りやすいように全身の体のゆがみや筋肉や関節を柔らかくしたり、足底の上に体が乗るような課題を頑張らない範囲でやっていくと痛みと恐怖心が取れてきました。恐怖心が強く歩けている実感がでるのに時間がかかってしまい、さらに疲労感や年齢的な活動量も影響し、時間はすごくかかってしまいましたが、現在は居室から食事席までの10mほどであれば見守りですが痛み、恐怖心なく歩けています。「痛み=運動不足による筋力低下」と考えられ、「運動を頑張りなさい」と言われることも少なくありませんが、A様の場合は足底の感覚を手がかりに立つのではなく、力で無理やり立とうとしていたため必要以上に力が入りすぎていた事、同じ筋肉だけを頑張って使っていた事など無意識のうちに頑張りすぎていた事が痛みに大きく関わっていたのではないかと感じます。A様とのリハビリを通して、生活の中での動きは本来はそんなに頑張って行うものではなかったなというのを思い出させて頂き、当たり前のことを忘れていることに気付かさせて頂きました。