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お知らせ

脳梗塞リハビリBOT静岡のお知らせを随時更新していきます。

2023.04.05 脳梗塞とは

脳梗塞急性期の症状と治療、相談窓口について

保本 夢土

この記事の監修者

保本 夢土

理学療法士

脳梗塞は命の危険を伴う病気であり、麻痺などの後遺症により、ご本人やご家族の生活や人生が一変してしまう病気でもあります。しかし、前兆症状が現れた段階や発症後早期に治療することで命の危険や症状の悪化が防げるとも言われています。今回は麻痺などの後遺症において、今後を左右する時期である脳梗塞の急性期について解説していきます。急性期では、何とか命を繋ぎ止めれたものの、今度は麻痺などの後遺症を患者様ご本人は受け入れることが出来ずとても混乱されます。そのような時の一番の支えはやはりご家族様ですが、ご家族様も同様に混乱されることがほとんどです。その中で転院先や多くのことを判断する必要があり、ご家族様のストレスも問題となっていますので、ご本人・ご家族様の心情についても紹介させて頂きます。記事の中で相談できる場所も紹介させて頂きますので、ご参考にしてください。

目次

脳梗塞の急性期とは?

脳みそのイラスト
脳梗塞の急性期について触れる前に、まずは脳梗塞という病気がどのようなものか改めて確認しておきましょう。

脳梗塞とは、脳の血管が狭くなったり詰まったりすることで、その先の血管へ血液が送られなくなり、脳細胞を損傷してしまう病気です。どの血管が詰まるかで運動麻痺などの様々な症状が生じてしまいます。脳梗塞をはじめとする脳卒中は、癌、心臓病、老衰に次いで死因第4位※1。栃木県で行われたある研究によれば脳梗塞発症後の5年生存率は62.3%という結果が示されています※2が、全ての癌の平均5年生存率は62.1%※3とされていますので、生存率のみで考えれば癌と同程度と言えます。発症後は手足の力が抜けて思うように力が入れられない弛緩性(しかんせい)麻痺から過剰に力が入り過ぎて手足をコントロールできない痙性(けいせい)麻痺という経過を辿りながら機能を少しずつ取り戻していく、というのが一般的な回復過程となります。

そんな脳梗塞の中で、発症初期の状態を脳梗塞急性期、あるいは超急性期と呼びます期間としては発症後数時間以内が超急性期、概ね2週間以内が急性期になります。脳梗塞急性期の治療では、新しい脳梗塞や脳出血を生じさせないよう全身状態の管理を行うことが最優先に考えられ、並行してできるだけ早く寝たきり生活を終了し、座ったり立ったりを促すこと(早期離床)を目的としたリハビリが行われます。

ちなみに脳梗塞は突然発症し手足や口の麻痺などが出現するものもありますが、実は明確な症状が出現する前にその前兆が現れているという場合が多いという事を、皆さんはご存じでしょうか?

脳梗塞の前兆と発症時の初期症状

脳梗塞を発症した女性

脳梗塞の発症には、
1. 前兆症状(一過性脳虚血発作:いっかせいのうきょけつほっさ、以下TIA)がある場合
2. 突然発症する場合
というふたつのパターンがあります。

TIAがみられた場合、90日以内に脳梗塞が発症する確率はおよそ15~20%前後。特にその半数はTIAがみられてから48時間以内に脳梗塞が発症している(※4)ため、脳梗塞を未然に防ぐためにTIAについての基礎知識や対応の方法を知っておくというのは非常に重要なことになります。

脳梗塞の前兆症状~一過性脳虚血発作:TIA~

脳梗塞が発症する前、前兆症状として出現する脳の血管の一時的な血流障害(脳の血管に梗塞はないのに、血液の流れが一時的に悪くなる状態)を「一過性脳虚血発作:TIA」と言います。運動麻痺や感覚障害、構音障害など脳梗塞と同様の症状がみられますが、症状は短時間(数分から1時間、最長で24時間)であり脳の血流が戻れば症状は消えます。血管に梗塞があるわけではないので、CTやMRI画像にも残りません。それゆえに脳梗塞の前兆症状と気付きにくく、また軽視されがちですが、このTIAを見逃さず発見できるか否かがその後脳梗塞を発症するか否かを決定づける因子と言っても過言ではありません。(TIAの詳細に関しては別記事で詳しく触れていますので良ければご覧ください※5)。

もしTIAを疑う症状がみられたら、迷わずすぐに救急車を呼び脳神経外科のある病院を受診しましょう。1秒でも早い方が良いです。受診して問題ないのならそれに越したことはありませんし、先生や病院の職員もとがめたりはしません。迷っていたその時間に救急車を呼んでいれば脳梗塞にならずに済んだのに・・・後になってそんな後悔をするのは本当に辛いことです。

脳梗塞の発症時の初期症状と対応

脳梗塞の初期症状とは具体的にどのようなものなのでしょうか?
● 運動麻痺(ものを落とす、足がもつれるなど、手足の動かしづらさを感じる)
● 感覚障害(手足がしびれる)
● 構音・言語障害(言葉が出ない、会話のつじつまが合わない、呂律が回らない)
● めまい
● 強い疲労感や脱力感
● なんだか頭がスッキリしない
● ものが二重に見える

脳梗塞を発症するとこういった症状が単体、あるいは複数同時に出現します。はっきり異常と分かる症状が現れる場合もあれば、なんだか疲れがたまっているのかな?程度に感じる症状もあるため一般の方が中々脳梗塞と気付けないケースも多くあります。しかし、脳梗塞は初期対応の速さが何より重要です。脳梗塞が生じて脳に血液が流れない時間が長ければ長いほど、その脳血管周囲の脳細胞は死滅していきます。そして、初期対応が遅ければ遅いほど、重い後遺症が残るリスクが高くなってしまうのです。具体的には、発症後3時間以内に治療が出来れば、梗塞の増悪を防げる可能性があると言われています。

脳梗塞の初期症状を自分で確認する簡単な方法として「FAST」という言葉があります。

F:Face 顔がちゃんと動くか、歪んでいないか
A:Arm 手は動くか、挙げたまま止めていられるか
S:Speach 呂律は回るか、言葉は出るか
T:time 上記に異常があれば急いで救急車を呼ぼう

1つでも当てはまったら、とにかく早く救急車を呼ぶ、もしくは病院を受診しましょう。

また、脳梗塞はその種類によって発症時の症状に違いがあります。

アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞 症状はゆっくりと進行
心原性脳梗塞(心原性脳塞栓症) 症状は急速に進行

不整脈に起因する心原性脳梗塞は、心臓内の血栓(血の塊)が血液に乗って脳の血管まで運ばれ血管を詰まらせるため、多くの場合突然症状が現れます。
ちなみに脳梗塞と脳出血でも発症時の症状が異なります。脳出血の場合は頭痛を伴い易いのに対し、脳梗塞の場合、意識障害はあっても多くの場合頭痛を伴うことは少ない。脳卒中は頭が痛くなる、と考えている方も多いのでこの点は特に注意が必要です。

脳梗塞の検査・診断

MRI検査

脳梗塞の診断には以下のようなものを使用します。調べたい内容により検査内容が変わります。

 MRI(磁気共鳴画像)

磁石と電磁波を利用し、身体の好きな部位の断面を画像で表示できる検査法。CTと比べ放射線や造影剤を使わないため身体内部にかかる直接的な負担は少ない。しかし検査時間が数十分と長いため、閉所に長時間いるのが苦手な方には負担が大きくなりやすい。画像の精度が高く、病変の有無や大きさ、発症時期の推測も可能であるため得られる情報量は多い。

CT(コンピュータ断層撮影)

身体に多数の方向からX線を照射し、そのデータを計算して輪切り画像で表示できる検査法。MRIと比べると画像精度や得られる情報量は少なくなるが、検査が非常に短いというのがメリット。脳梗塞や脳出血の初期検査として良く用いられる。非常に少ないとはいえ放射線被ばくのリスクや造影剤の副作用を配慮する必要があるため、検査自体が困難な方もいる。

 MRA(磁気共鳴血管造影)

脳の血管を撮影する検査法。脳血管の狭まりや詰まり具合を正確に確認する事が可能。

脳血流量検査

農血管の血流量を調べ、脳血流の異常を把握できる検査法。脳梗塞、てんかん、認知症といった症状の診断に有効。

血管造影検査

血管に造影剤を流し、血管の走行や形態を正確に撮影できる検査法。ごくまれに造影剤による副作用(吐き気、めまい、けいれん等)が見られるケースもあるので注意が必要。

脳梗塞の検査としてはCT検査やMRI検査が有名ですが、それだけでは把握が難しい場合もあります。医師は症状や訴えを聞きながら上記のような検査を複合的に組み合わせていきます。

急性期に見られる脳梗塞周辺の変化(ペナンブラ)

ペナンプラ

脳血管が詰まり脳梗塞が生じると、その先の細胞には血液が流れなくなってしまい細胞が死滅してしまいます。しかし、完全に血管が詰まり細胞死が生じてしまった完全梗塞部位の周りには、血流量が低下しているものの何とかかろうじて細胞死を免れている部分があります。その部分のことをペナンブラと呼びます。ペナンブラ領域は速やかに血流を再確保出来れば完全梗塞への移行を防げると言われています。つまり、ペナンブラ領域が完全に機能しなくなってしまう前に血流を確保できれば後遺症を最小限に食い止めることが出来るという事です。速やかな血流確保とは、具体的に言うと脳梗塞が発症してから3時間以内。このことからも、いかに早期の受診、早期の治療が重要なのかという事がご理解いただけると思います。

急性期における治療

手術室

脳梗塞の急性期では、早い段階で脳の血液循環を改善させることが非常に重要となるため、脳の血流確保が治療の主な目的となります。以下では、その際に治療の中心として行われるtPA静注療法、経皮的脳血栓回収療法、血栓吸引療法についてお話していきます。

tPA静注療法

tPA静注療法とは、脳の血管に詰まった血栓を溶かす薬を静脈注射で直接血管内に入れる治療法です。

● 症状が出現してから4時間範囲内である
● 頭部CTやMRIで脳梗塞がない
● 症状が改善していない
● 出血しやすい背景がない(内服薬や病気など)
● 手術を受けたばかりではない

使用にはこういった条件があります。tPA治療が効果を発揮するのは心原性脳梗塞の場合で、3人に1人程度は症状の改善が見込めると言われています。ただ、副作用として出血しやすくなるというデメリットがあるため、場合によっては出血性脳梗塞に繋がるリスクも考慮していく必要があります。

経皮的脳血栓回収療法

足の付け根など太い血管からカテーテルを入れ、ステントという金属の網を血栓がある部分まで挿入して直接血栓を絡め取る治療法です。tPA治療が血栓を溶かす治療であるのに対し、こちらは物理的に血栓を掻き出す方法になります。一般的に発症から8時間程度以内が適応時間とされています。

血栓吸引療法

血栓吸引療法は2000年前後から普及し始めた、比較的新しい治療法です。イメージは前述した血栓回収療法に近いですが、こちらは「掻き出す」のではなく「吸い取る」治療法になります。吸引力の強いポンプに接続されたカテーテルを使用し、血栓を吸い取るように回収します。この治療法に関してはややネガティブな研究結果(吸引力が弱いと途中で血栓を落としてしまい、別部位での梗塞に繋がるリスクがある)もあり、日欧米のガイドラインではクラスⅢ(医学的根拠における推奨度は低い)と、他の治療法と比べるとまだ発展途上であるという側面も否めません※6。とはいえ、今後の脳梗塞治療の発展とともに精度の向上が期待されている治療法のひとつです。

急性期におけるご本人様・ご家族様の心情と今後実施すべきこと

脳梗塞の突然の発症は、麻痺のような身体的な悩みだけではなく、大きな不安や混乱といった精神的な悩みももたらします。命は助かるんだろうか、後遺症はどの程度残るのだろうか、今後の生活はどうしていったらいいんだろう・・・。そしてそんな不安は、もちろんご本人様だけでなくご家族様方も感じていることでしょう。

● 何とか支えてあげたい
● 病前の姿や機能に戻ってもらいたい
● 一緒に苦労を乗り越えていきたい
● とにかく生きていて欲しい
● 支えたいけど、自分の仕事はどうなるのだろう…
● 一緒に住んで介護をした方がいいのだろうか…

ご本人様にもご家族様にも、様々な想いや願い、漠然とした不安があることと思います。心の支えやケアは、ご本人様はもちろんとしてご家族様にも必要です。そしてそういった心境の中、各々が退院を見据えながらリハビリや各種手続きなどを進めていかなくてはなりません。脳梗塞の場合、急に脳梗塞を発症し麻痺などの脳梗塞後遺症と呼ばれる障害を負ってしまいます。その後すぐに、「生活に戻るためにリハビリを頑張りましょう」と言われても、心が追いついていかないと想像できます。病気や事故で障害を負った場合、「障害の受容」と言われる障害と向き合うための心の過程があると考えられています。ご本人様の心情を理解する手がかりになりますので、ご紹介させて頂きます。

ご本人様の心情(障害の受容)と今後実施すること

障害の受容過程

脳梗塞後遺症のような障害を負った場合、上記の図のような心の過程を辿ると考えられ、その過程を「障害の受容過程」と言われます。

① ショック期

病気や事故にあった事実、後遺症が残った事実から強いショックを受ける時期です。この時期は、自分自身に何が起こったか理解できず、物事を冷静に考えられません。時間経過ともに少しずつ現実を認識できるようになると言われますが、個人差がありますので注意が必要です。このような心情では、リハビリに消極的になってしまうかもしれません。

② 否認期

障害から目を背けて、置かれている現状を認めようとしない時期です。この時期は、医師から後遺症の説明を受けてショックを受けたり,健常者に嫉妬を抱いたり、わずかな回復でも過大評価してしまう傾向にあるようです※7。このような心情では、リハビリには積極的になれず、この時期が長く続くとリハビリを拒否するなどの影響が出てきてしまいます。現状を認めたくないので、家族様の応援も素直に聞けない可能性があります。

③ 混乱期

認めたくない気持ちと前を向こうとする気持ちが交錯する時期です。この時期は、「怒り」「悲しみ」「抑うつ」などが現れ、気落ちしたり,死にたいと思ったり,何もする気がなくなったりする傾向があります。その結果、介助者(ご家族様・病院スタッフ)とのトラブルが生まれやすくなってしまいます。この「怒り」は特定の人に向けられたものではなく、行き場のないいらつきが怒りとして介助者に向いてしまいやすい事を理解して頂きたいです。

④ 努力期

色々なことをきっかけに障害に負けずに前を向いて生きようと努力する時期です。この時期は、自分で努力しなければならないと悟り,落ち込んではいけないと思い,他の患者を観察する傾向があります。

⑤ 受容期

自身の現状と未来について、ある程度の折り合いをつけながら、障害を自分の個性の一部として認める時期です。この時期になると、「今の障害のある状態,これが自分なのだ」と認められる傾向にあります。「障害があっても色々な事が出来る」、「障害があるから別の生き方を味わえた」という様に考えられ、皆と対等に交流できる方もおられます。

一般的にはこのような過程を辿ると考えられますが、この通りに当てはまらないことももちろんあります。また、受容期になるまでの期間も、個人差があり何年経っても『受容』出来ないという方も多くいらっしゃるのが現実です。障害の受容というものは言葉でいうほど簡単なことではなく、受容しなくてはいけないと過度に焦るべきではありません。本人様にとって、障害受容を強要されることは本当に辛く苦しいことです。大切なのは、家族様もリハビリ職もご本人様がこのような心情の中、リハビリを頑張って頂けていることを知ることだと考えます。特に急性期は、多くの場合ショック期~混乱期であり、心がこんなに苦しい中で、身体が麻痺している現実と毎日直面しながら、リハビリすることは並大抵のことではないと思います。ご家族様をはじめとした周囲の方々は、どうかこれらの心情を汲みながら関わって頂けたらと思います。そういった関わりが、結果的にご本人様の『障害受容』を助け、更には安定した気持ちで効率的なリハビリを行うことに繋がるはずです。

ご家族様の心情と今後実施すること

もちろん、ご両親やお子さんなど、ご家族が抱えるストレスも並大抵のものではありません。ご本人様同様、精神面へのケアが必要となります。実際に、先に述べたような多くの葛藤の中、何もしてあげられない無力感や絶望感で心が押しつぶされそうになっているご家族を我々も幾度となく目にしてきました。是非ともご家族様がすべてを背負って頑張り過ぎないようにして頂きたいです。大切なことは、物理的に何かをしてあげることではなく、上記の障害の受容過程を踏まえ、寄り添い、辛さを共感してあげることだと感じます。ご家族に理解してもらえるという安心感が、結果として生きる意欲、リハビリへのモチベーションとなりQOL(生活の質)の向上に繋がっていきます。

また、家族としてこれから退院に向けて、何をするべきなのか分からず不安、という方もいらっしゃると思います。急性期の病院に入院した後、全身状態が安定したら回復期病院への転院、もしくは自宅退院への準備や手続きを行っていく必要があります。もちろんひとりで全てやらなくてはいけないという訳ではなく、病院のソーシャルワーカーがしっかりとサポートしてくれますので、相談しましょう。

機能の回復に影響するご家族様のご本人様と病気への理解と家族関係

脳梗塞後の機能回復には、ご家族様の理解や良好な関係性が必要不可欠です。研究でも、「ご本人様とご家族様が互いのつらさを共有できるか否かが生活の質(QOL)に影響する。ご本人様の回復意欲には,患者に対する家族の理解の程度や,患者と家族の人間関係が重要である」と言われています※8。仮に運動麻痺をはじめとした後遺症が軽度だったとしても、ご家族のご本人様および脳梗塞への理解が不足しているが故に悪気なく心無い言葉を常々口にしていたらどうでしょうか?

● 「麻痺はそんなに重くないんだから頑張りなさい」
● 「出来ないのはあなたの努力が足りないからでしょ?」
● 「もっと頑張ってもらわないとこっちだって困るんだから」

先ほどの障害の受容過程にあるように、ご本人様も、必死に今の自分自身の身体と向き合いながら前を向こうと努力しているハズです。上手くやれるはずだ、上手くやらなきゃと思っていても、身体や心が上手く噛み合ってくれません。脳梗塞とは、そういう病気なのです。
ご家族様ももちろん辛く苦しいと思いますが、ご本人様の心情と脳梗塞という病気を理解することが、リハビリの効果を高めるためにとても大切になるということを念頭に置いていただけると幸いです。

キーパーソンになった子への理解

脳梗塞を発症して後遺症が残るケースでは子がキーパーソンになるということが少なくありません。子がまだ若い場合は、ご夫婦のどちらかがキーパーソンになるよりも家族の関係性を保つのが難しくなります。研究でも、子がキーパーソンになった場合の心情やご本人様との関係性については問題視されており、子に対して支援が必要とも言われています※8。脳梗塞急性期の時期はまだお互いが今の状態を上手く理解出来ていないというケースがほとんどで、冷静に親の現状を受け止め、先々の事を考えるというのはそう簡単にできるものではありません。
だからこそ、子がキーパーソンになった場合は周囲がしっかりとサポートし、十分な支援をしていかなくてはいけません。

急性期における相談窓口

脳梗塞の急性期は、とりわけご本人様にとってもご家族様にとっても頭が混乱して大きな不安を抱えてしまう時期です。

● 何をどうしたらよいか分からない
● 専門用語が多くて理解できない
● ご本人様だけでなくご家族様も大きなストレスを感じてしまう

しかし、こういった悩みを抱えるのは至極当然のこと。不安になって当たり前なのです。遠慮せずに相談窓口に相談しましょう。相談窓口は、病院内にはもちろん病院外にも存在します。ただ患者様やそのご家族の立場からすると、実際には慌ただしい空気感もあり中々不安のすべてを病院で相談しにくいかもしれません。特に急性期病院で忙しそうに動き回るスタッフの姿をみると、

● こんなことを聞いたら悪いかもしれない
● 自分たちで何とかするべきだ

このように考えてしまう方も非常に多くいらっしゃいます。あるアンケートでは、院内の相談員や相談窓口について利用しやすかったかという問いに対し、否定的な回答(全くそう思わない、そう思わない)をされた方は急性期病院で45%、回復期病院で33%、療養型病院で39%だったという結果も出ているそうです※9。

もちろん病院の相談窓口を利用するのに遠慮をする必要はありませんし、疑問に思うことはしっかりと聞くべきです。しかし、それでも抵抗があるという方は外部の相談窓口に問い合わせるというのも方法のひとつです。

脳卒中全般の相談窓口

院外の相談窓口としては、

● 脳卒中相談窓口
● 脳卒中なんでも相談

というものがあります。

● 入院や治療でかかる費用が心配
● どういう流れで治療が進んでいくのか不安
● 退院後の生活がイメージできない

など、心配事は十人十色。様々な悩み、様々な不安があると思いますが、相談に乗ってくれる人、アドバイスをくれる人が必ずいます。まずは躊躇せずに相談窓口に問い合わせてみましょう。

高次脳機能障害の相談窓口

運動麻痺など目に見える障害は比較的理解を得やすいですが、認知機能の低下(理解力や判断力、記憶力の低下など)や失語症(言葉が上手く出ないなど)といった、いわゆる高次脳機能障害は、一見すると障害に気付いてもらいにくく誰にも相談できず悩んでいるという方が少なくありません。とりわけ、病院を退院した後は相談する場がないといった声がよく聞かれます。こういった場合、

● 高次脳機能障害相談窓口

という、高次脳機能の悩み相談に特化した相談窓口を利用することで悩み解決の糸口を見つけることができるかもしれません。

急性期におけるリハビリの目的と方向性

リハビリをしているイラスト

脳梗塞の急性期では、血圧や意識レベルなど全身状態の管理が最優先となります。再発を予防しながら安定した全身状態を確保し、長期臥床による機能低下を防ぎ、そこから機能回復の為の土台を作る…急性期のリハビリはそういった目的をベースにしながら行われます。まずは安定して座れること、立てること、それが出来たら歩いたり、日常生活で必要な動作を少しずつ練習していきます。
脳梗塞を発症した当事者の方には、脳梗塞急性期のリハビリとはどんなことをやるのだろうと不安を感じている方もいると思いますが、医師やリハビリ技師を信じていれば大丈夫です。その方にとっての最善の治療、リハビリを提案してくれるはずですから、強い心をもってリハビリに臨みましょう!

脳梗塞の前兆症状や初期症状がみられたらすぐに救急車を呼びましょう!

脳梗塞は恐ろしい病気のひとつです。初期対応が遅れればそれだけ重篤な後遺症が残るリスクが高くなります。脳梗塞の前兆症状や初期症状がみられたら、とにかくすぐに救急車を呼びましょう。そしていざという時に慌てず冷静に、かつ早急に対処するためには、脳梗塞についての正しい知識が必要不可欠です。今回の記事が、皆さんのお役に立てれば幸いです。

脳梗塞の後遺症で、リハビリをご希望の方へ

脳梗塞リハビリBOT静岡では脳梗塞の後遺症による手足のつっぱり(痙縮)の改善など、さまざまなメニューを用意しております。90分体験プログラムでその効果を感じて頂くのが最もおすすめの方法ですが、まずは一度相談を、という方には「専門家への電話相談」というサービスをご用意しております。以下フォームから必要事項をご入力頂くと、脳梗塞リハビリBOT専属の理学療法士から折り返しご電話をさせていただいております。ぜひお気軽にご利用下さい。
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(参考文献)
※1 大塚製薬 :脳卒中ってどんな病気?https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/stroke/about/
※2 今井 明 他:脳卒中患者の生命予後と死因の5年間にわたる観察研究 栃木県の調査結果とアメリカの報告との比較https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/32/6/32_6_572/_article/-char/ja/
※3 厚生労働省:がんの5年相対生存率https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/18/backdata/01-01-02-03.html
※4 先進医療.NET:脳卒中の前触れ発作「一過性脳虚血発作(TIA)とは」https://www.senshiniryo.net/stroke_a/08/index.html
※5 加藤隆三 監修:脳梗塞の前兆と初期症状の対応 一過性脳虚血発作とはhttps://www.noureha-shizuoka.com/news/749/
※6 上妻 謙 他:血管吸引療法は有効かhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/njcoron/1/0/1_1.004/_pdf/-char/ja
※7 岡本五十雄:障害受容(克服)-脳卒中患者のこころのうち-*1
※8 岩佐 由貴 他:脳卒中発症により急性期病院に入院となった高齢患者の子が抱く思い
※9 日本脳卒中協会:脳卒中を経験した当事者(患者・家族)の声

寺澤 慶大

ライター

寺澤 慶大

理学療法士

急性期脳神経外科病院での10年間の臨床経験をはじめ、デイケア、デイサービス等の介護分野での経験や自費診療、スポーツトレーナー活動など幅広い分野でのリハビリ業務を経験。現在は整形外科クリニックで運動器疾患に悩む患者様のリハビリに携わっている。「病名に捉われず、その人の本質的な運動機能を改善するリハビリを提供する」がモットー。理学療法士としての仕事は「趣味」であり「天職」。多角的な視野や思考を大切に考えており、常に新しい知見や考え方を取り入れながら日々理学療法士としての知識・技術を高めるべく研鑽を続けている。また、世の中の健康リテラシーを高めるためWebライターとしても活動。理学療法士としての知識や経験を元に、医療や介護に関する情報を発信している。
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保本 夢土

この記事の監修者

保本 夢土

理学療法士

経歴:2008年に鈴鹿医療科学大学 理学療法学科を卒業し、理学療法士国家資格を取得。同年~2018年まで静岡県内の療養期の病院、介護老人保健施設に勤務し、慢性期の患者様に携わる。その中で脳血管障害に対する治療を中心に学び、脳卒中患者様を専門に携わりたいという思いから、2019年に脳梗塞リハビリBOT静岡に勤務。運動麻痺の改善に最善を尽くすこと、お客様の身体および精神的な悩みを共有し、少しでも表情が明るくなるよう心がけています。

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