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2023.04.07 脳梗塞のリハビリ
脳梗塞の時期別リハビリで後遺症を改善
この記事の監修者
保本 夢土
理学療法士
脳梗塞を発症すると「麻痺の影響で身体が思うように動かない」「言葉が出にくい」など様々な症状が現れ、今後の生活や身体状況について不安や悩みを抱えてらっしゃる方は多いと思います。また当センターに利用されているお客様の中でも、「リハビリの甲斐があって自宅に戻る事が出来たものの、思っていたより生活動作が大変」「麻痺などの後遺症をもっと改善したい」といった声が多くあります。
脳梗塞後の後遺症は発症後の経過により差異はありますが、適切な治療やリハビリを受けることにより脳の機能や麻痺などの後遺症が改善する可能性があります。
今回は、脳梗塞発症後のリハビリについて時期別(急性期・回復期・生活期)に解説し、特に「生活期のリハビリ」と「リハビリのポイント」について取り上げたいと思います。リハビリの成果は理学療法士などの専門職の力だけではなく、発症されたご本人様やご家族様の協力の上に成り立つものです。この記事をご覧になっている方に、リハビリについて少しでも知っていただき、担当のリハビリスタッフと二人三脚で改善を諦めず「改善」を目指していきましょう。
目次
脳梗塞におけるリハビリの必要性
昨今は敢えて言う必要もないくらい広く知られていることではありますが、脳梗塞後のリハビリは本当に重要です。入院時、こと脳梗塞の急性期においては様々なリスク管理が最優先されますが、そういった時期を過ぎるととにもかくにもリハビリを徹底的に行います。過去の記憶を思い返してみれば入院期間中はリハビリばかりやっていた、という脳梗塞患者様も少なくないのではないでしょうか。ではなぜ、脳梗塞になった後はそこまでリハビリを優先しなければならないのでしょう?ここではそういった部分について触れてみたいと思います。
まず、脳梗塞によって生じやすい主な問題点は以下のようなものが挙げられます。
● 手足の運動麻痺
● 口の麻痺
● 高次脳機能障害
● 非麻痺側(麻痺していない側)への過剰努力
● 環境への不適応
手足が動かしにくい、しゃべりにくい、ものが食べにくいといった症状は脳梗塞の症状として比較的イメージしやすいかと思います。しかしながらそれ以外にも、認知機能の低下をはじめとした高次脳機能障害、麻痺のない側の手足を頼るばかりに生じる非麻痺側(ひまひそく)の過剰努力、身体の不自由さから生じる環境への不適応など、一見すると周囲からは気付いてもらいにくい症状は多岐にわたります。
さて、こういった症状は自然と良くなるものなのでしょうか?実は自然回復でも一定の所までは回復するケースも少なくありません。
脳には可塑性(かそせい)というものが存在します※1。残念ながら現代医学では脳梗塞によって機能しなくなってしまった脳細胞自体をよみがえらせることはできません。しかし、機能しなくなってしまった脳細胞が担っていた機能(手足を動かす、話す、など)は、残存している脳細胞たちが新たな神経回路を作り上げることで再び機能しはじめるのです。つまり、脳梗塞後も日常生活を送っていれば相応の機能は自然と獲得できていくということになります。
とはいえ、脳細胞は必ずしも正しく神経ネットワークを構築してくれるとは限りません。筋肉や関節に無理のかかる動かし方で手足を動かし続けていればその使い方を脳が再学習し、その動かし方しか出来なくなってしまいます。
脳梗塞を発症してから理想的な機能回復につながる神経回路の再構築をすすめるためには、正しい運動学習につなげるためのリハビリが必要不可欠なのです。そして、リハビリを始める時期は早いに越したことはないのですが、始めるのが遅すぎたから効果が全く見込めないということはありません。
以前は「麻痺した側の手足は良くならないから使える方の手足をうまく使う必要がある」、「発症後半年以降は麻痺が良くならない」といった通説も聞かれましたが、近年の研究ではこういった認識は正しくないといった考え方が主流となっています。脳梗塞発症直後も病院を退院した後も、より良い生活を再び手に入れるためにリハビリはとても大切である、ということを頭の片隅に置きつつ先を読み進めてもらえたら幸いです。
脳梗塞の時期別リハビリとは
脳梗塞は、発症からの時期によって急性期、回復期、生活期(慢性期)に分けられます。上記の図は回復機能曲線といい、脳梗塞発症からの時間経過と機能の回復について視覚化したグラフになります。
発症直後、ガクッと身体機能レベルが低下しますが、急性期病院での手術や治療により全身状態が安定し、身体機能や高次脳機能が著しく回復するのはグラフの通りです。その後は回復期と呼ばれる最もリハビリに力を入れる時期に入ります。この時期は回復期リハビリテーション病棟で、自宅へ帰ってからも生活に困らないよう集中的にリハビリを行います。そして退院の目途が付いたら自宅へ退院するわけですが、リハビリはここで終わりではありません。退院後も自宅での生活に適応していくため、生活期(慢性期)のリハビリとして様々な形でリハビリを続けていく必要があります。
脳梗塞後遺症に対するリハビリ「急性期」
急性期のリハビリとは、発症直後に行うリハビリを指します。医学的に可能であれば24~48時間以内にリハビリを開始することが推奨されており※2、いかに早くリハビリを開始するかという事が以降の機能回復に大きく影響を与えると考えられています。
急性期のリハビリでの目的は主に全身状態の管理と廃用症候群(長く寝ていることで筋肉がやせ細るなどの二次的な機能低下を引き起こすこと)の予防になりますが、状態が良ければ積極的に回復期リハビリへ繋げるためのリハビリを行っていきます。状態が安定しないうちは1回20分程度、ある程度積極的なリハビリが出来るようになれば急性期であっても1回1時間以上のリハビリを行う場合もあります。概ね発症から1週間~1ヵ月程度を急性期と呼び、一般的にその期間に行うリハビリを急性期リハビリと呼びます。
関節可動域訓練
関節可動域訓練はその名のごとく、関節の可動域を維持するためのリハビリです。脳梗塞発症後は筋肉のこわばり感やツッパリ感が問題となる事が多く、関節を動かさずに放置しておくとあっと言う間に硬くなってしまい、様々な動作が困難となります。そういった事態を避けるため、関節可動域訓練は可能な限り早い段階から行なわなくてはいけません。たとえ運動麻痺が重度で自分で動かすことが難しいという場合でも、セラピストの手でしっかり関節運動を行ないながら筋肉を伸縮させることで静脈血栓症や浮腫(むくみ)の予防にも繋がるため非常に重要なリハビリとなります。
離床訓練
離床訓練も可能な限り早期から行っていきたいリハビリのひとつです。離床が遅れると全身的な筋力低下やせん妄の発現率に悪影響を及ぼすと言われており※3、これらの症状はその後行うリハビリの重大な阻害因子となり得ると考えられています。加えて寝ている時間が長くなると心肺機能の低下や関節拘縮等にも繋がっていくため、早い段階で座位➡立位➡歩行と段階的に離床を進めていく必要があります。一方で、脳梗塞の急性期は自律神経障害の影響で起立性低血圧が生じやすくなっているため、離床を行う際はそういった症状への配慮も大切になっていきます。
摂食・嚥下訓練
摂食・嚥下訓練とは、食べる練習や飲み込む練習の事を指します。こういった機能に関与する部位が脳梗塞によって障害されると、物を食べる、飲み込むといった動作が難しくなってしまいます。これらは栄養を摂取するために不可欠な機能。筋力や体力の低下にも直結するため摂食・嚥下訓練は積極的に行っていきたいリハビリのひとつです。また、飲み込む機能が低下すると「誤嚥性肺炎」を起こすリスクが高まります。誤嚥性肺炎は高齢者の寝たきりリスクにもなりやすいため注意しなくてはいけません。
脳梗塞後遺症に対するリハビリ「回復期」
回復期のリハビリとは、急性期を脱した後の最も身体や脳の機能の向上が見込まれる時期に行なうリハビリを指します。具体的には発症後2週間~1ヵ月程度以降からのリハビリを回復期リハビリと位置付けているところが多いです。
脳梗塞で生じた運動麻痺は多くの場合、発症当初は弛緩性(力が抜けてだらんとした状態)だったものが急性期から回復期へと移行する時期には徐々に筋肉に力を入れられるようになっていきます。ただ、最初はその力のコントロールが難しく中々うまくいきません。中々力が入らない、もしくは少し力を入れようとしただけなのに手足全体が突っ張るように硬くなり、思うように動かせず何度も歯がゆい思いを経験した、という人も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、回復期のこの時期こそリハビリの頑張りどころです。神経回路の再構築は発症後3ヵ月~6ヵ月の期間が最も効率よく行なわれる※4ので、医学的に回復期リハビリを行う期間が最も身体や脳の機能回復のリハビリを行うのに適した時期と言えます。
そんな重要な回復期リハビリですが、主に行うリハビリは以下のようなものになります。
● 運動麻痺に対するリハビリ
● 非麻痺側に対するリハビリ
● 在宅生活を見据えた生活動作を改善するためのリハビリ
運動麻痺を出来る限り改善させ、同時に非麻痺側を無理なくスムーズに使いながら、自宅へ帰ってからの生活をイメージした実践的なリハビリを行う・・・それが脳梗塞に対する回復期リハビリの軸となります。
運動麻痺に対するリハビリ
この時期の脳梗塞患者様は、以下のような体験をされる方が増えてきます。
● 歩く時に足に力が入るようになってきたが、逆に麻痺側を振り出す時に膝周りの力が上手く抜けずスムーズに歩けない(膝が曲がらない)。
● 肩や腕に力が入るようになってきたが、テーブルの上のコップを取ろうとすると勢いよく手を伸ばしてしまいコップを倒してしまう。
● 柔らかいものを指でつまもうとすると力がコントロールできずつぶしてしまう
こういった訴えに対しリハビリでは、筋力を発揮するという目的以外にも
● うまく筋肉の力を抜けるようにする
● 発揮する筋力を上手くコントロールする
といった部分も課題として考えていかなければいけません。少し専門的な言い方をすれば、「筋肉や関節を協調的に動かすためのトレーニング」です。
歩く時は股関節・膝関節・足関節をスムーズに協調させながら、関節を曲げる時に働く筋肉と伸ばす時に働く筋肉を、適切な力加減・適切なタイミングで収縮させることではじめて安定した(滑らかな)自然な歩行動作となります。こういった動作のひとつひとつの要素が正しく機能するよう行うのが、「筋肉や関節を協調的に動かすためのトレーニング」になります。
運動麻痺は、単純に「手足が動かせない」という症状だけではありません。回復期に入ってくるとむしろ、「力を上手くコントロールできない」という問題点が顕在化してきます。運動麻痺に対するリハビリでは、こういった部分に対して様々な手段・方法を用いてアプローチしていきます。
運動麻痺に対するリハビリの例
徒手療法 | セラピストに手で麻痺回復訓練を行います。 |
---|---|
ボツリヌス療法 | 神経毒を注射し、過剰な筋肉の緊張を押さえることで手足を動かしやすくします。 |
物理療法 | 低周波などの電気刺激を使い運動麻痺を改善させます。 |
ロボットリハビリ | ロボットスーツを使い効率的な動作練習を行ないます。 |
非麻痺側に対するリハビリ
非麻痺側に対するリハビリでは、如何に過剰努力させず効率的に非麻痺側の手足を使えるかという部分がポイントになってきます。一般的にはあまり知られていない事ですが、脳梗塞で片麻痺が生じてしまった場合、非麻痺側は脳梗塞の影響を全く受けていないかというとそうではありません。
実は非麻痺側に関しても多かれ少なかれ動かしにくさやこわばり感を感じていることは珍しくないのです。
ただでさえ半身が運動麻痺で動かしにくい状況です。こういった理由も相まって非麻痺側の手足を過剰努力させず使うというのは、仮に簡単な動作であったとしても実は我々が想像している以上に困難になります。例えば歩くという動作です。我々健常者は意識せずとも自然と足を振り出せます。しかし運動麻痺がある方はそうはいきません。場合によっては非麻痺側の足を突っ張らせながら麻痺側の足を力いっぱい振り出したりします。動作の中で、非麻痺側の手足もただがむしゃらに使えばいいというわけではなく、専門的な知識を持つセラピストと正しい体の使い方、力の抜き方を学んでいくことで無理のない動作を行えるようになるのです。
関連記事:脳梗塞後遺症 麻痺していない半身への影響 ~麻痺側、非麻痺側とは?~
在宅生活を見据えた生活動作を改善するためのリハビリ
在宅での生活を見据えた動作、というと皆さんはどんな動作をイメージされますか?回復期リハビリでまず重要視されるのは移動手段です。歩行が可能であれば杖や下肢装具が必要なのか、難しいのであれば車椅子等を使った移動手段を検討するか、など在宅での生活を実際にイメージしながら歩行や車椅子操作の練習を行っていきます。
それ以外にも、
● 食事
● 入浴
● トイレ動作
等は自宅での具体的な方法を想定しながら優先的に練習します。
また、日常生活動作だけでなく、退院後の生活の中での役割(家事や仕事など)に応じた動作の練習も並行して行っていかなくてはいけません。身体状態によっては、病前と同じように行うことが難しい動作も少なくありませんので、非麻痺側での代替や自助具等を活用しながら可能な限り不自由さを感じにくい方法を模索・検討し、方向性が決まったら多職種で連携しながらリハビリチーム一丸となって生活動作のリハビリを行っていきます。
尚、退院の目途が立ったら実際に家屋調査という形でご自宅の生活環境を確認し、必要に応じて家屋改修で生活環境の調整を行う場合もあります。
脳梗塞後遺症に対するリハビリ「生活期」
回復期では自宅へ帰ってからのことをしっかりとイメージしながらリハビリを行いますが、それでも退院して自宅へ帰ってみると、多くの方が想像していた以上に生活の不自由さを痛感します。
● 住環境の変化に適応できない
● 生活して初めて気付く問題点が沢山ある
● 活動量が少なくなり身体機能が低下する
● 更なる身体機能や動作能力改善への欲求
これらは在宅へ退院した皆さんが必ずと言っていいほど直面する課題です。リハビリは入院している期間だけ行えばよい訳ではありません。こういった不自由さを解消しながら少しでも生活の質(QOL)を高めていくため、リハビリを継続的に行う必要があります。むしろ、生活期(慢性期)でおこなうリハビリこそがそれから先の将来を決定づけると言っても過言ではないくらい、大きなウエイトを占めています。
具体的に生活期(維持期)のリハビリでは、
● 住環境の変化に対する適応
● 身体機能および動作の維持と二次的障害の予防
● 更なる身体機能および動作の改善
を主な目的としながら、退院後継続的に行なっていくことになります。
※ちなみに生活期(慢性期)では、主に介護保険という枠の中でリハビリを行っていくことになるため、それまでと同程度の量や質を求める事が難しくなります。介護保険の枠で行うリハビリはあくまで『機能を落とさず生活を送るため』のもの。『機能を回復させる』という視点はどうしても希薄にならざるを得ません。それまでは当たり前のように1日1~3時間もリハビリを行えていたのに、できても週に1回か2回、時間としても20分~40分程度となるため、満足できるくらいじっくりとリハビリを行う、ということが現実的に難しくなってしまいます。少し前に話題となった「リハビリ難民」という言葉を耳にしたことがあるという方もいらっしゃると思いますが、この言葉はこういった理由から生まれました。意欲はあるのにリハビリに取り組む場所がない、入院期間中にもっとしっかりとリハビリをしておけばよかった、という声は今でも多方面から聞かれています。
① 住環境の変化に適応するリハビリ
回復期病院から自宅へと住環境が変われば、当然新しい環境に適応していかなくてはいけません。それまで暮らしていた自宅であっても、身体機能の変化から住宅改修や福祉用具の利用を余儀なくされる場面は少なくないと思われます。そして、住環境を出来る限り整えたとしても片麻痺の方にとっては「住環境の変化に適応し1日1日を普通に生活する」ということ自体が非常に大変な事です。
上手く住環境の変化に適応できずにいると、
● 転倒
● 活動量の低下
● 麻痺側の使用量の低下
● 非麻痺側の過剰努力
こういった問題が生じやすくなってしまいます。
ただ、これらの問題については、
● ご自宅の環境に合わせた生活動作練習
● 生活環境の更なる調整
などを適切に行うことで、ある程度解消する事が可能となります。
ご自宅の環境に合わせた生活動作練習
リハビリで最も効果が現れやすいのは、実際の生活環境に合わせた動作練習です。より実践的で具体的な動作を反復的に練習することで、自宅での生活にも適応しやすくなります。
ちなみに、退院後の環境変化で生じやすい問題点としては以下のようなものが考えられます。
● ソファーに座る(体が沈むため大変、長い時間だと大変…など)
● ソファーやベッドからの立ち上がり
● トイレ動作(病院よりも狭くなる、手すりが両方にない、段差がある…など)
● テーブルでの食事(高さが合わない、車いすが入らず距離が遠い…など)
● 食器洗い(特に立った状態、いろんな形の器がある…など)
● 洗濯物干し・取り込み
● 屋外歩行(人や自転車が来るのが怖い、青信号内に渡れない…など)
● 買い物 など
脳梗塞で後遺症が残ってしまった人は、動作の中で上手く力がコントロールできなかったり、筋肉や関節を協調的に動かすのが苦手な事に加えて、高次脳機能の低下があれば物事を順序だててスムーズに行うということも非常に困難になります。脳梗塞後遺症に悩まされている方は「固定的で決まった動き以外の動作が難しい」、「複数の動作を同時に行ないにくい」という特徴があります。
● 立ったまま手先を使った作業をする
● 会話をしながら不整地を歩く
● 物事を考えながら手足を動かす
これらの動作は非常に難しいといえますが、同時にリハビリの中での課題として適切にアプローチすることができれば、様々な動作の困難性を克服出来る可能性が高まります。
生活環境の更なる調整
生活環境の更なる調整というのは、実際に自宅での生活を再開して気付いた点を踏まえて医療保険や介護保険のサービスを改めて見直すことを指しています。
● 福祉用具は適切に機能しているか、変更の必要性はあるか
● リハビリは医療保険の枠を利用して続けるか、介護保険の枠を利用して続けるか(病院でのリハビリ、訪問リハビリ、デイケアの利用など)
● 訪問看護や訪問介護の必要性はあるのか
● 通所系のサービスを重視するのか、在宅系のサービスを重視するのか など
細かい部分については担当のケアマネージャーを中心に多職種でアイデアを出し合いながらその方に合ったより良い生活環境の確立を目指していきます。
② 「維持」と「予防」に対するリハビリ
回復期病棟に入院しリハビリを行っている時は、おそらく多くの方が「身体機能を回復させる」という部分のみにフォーカスしていたのではないかと思います。一方で、在宅へ帰ってからは「回復させた身体機能を低下させない」という視点も非常に重要になるため、身体機能や動作能力の「維持」と二次的障害の「予防」は、生活期(慢性期)のリハビリにおいて最も重要なテーマのひとつ。単純に身体機能を維持する、という視点だけではなく、
● 自立心の維持
● 認知症の予防
● 長期的な在宅生活の継続
● 家族との良好な関係性
こういった事を継続的に続けていくために必要なリハビリを行う、というイメージを持つことがとても大切です。
実際、身体機能や動作能力を維持していくということは言葉で言うほど簡単なことではありません。様々なサービスを利用しながらリハビリの時間を確保することは可能ですが、絶対量としては入院期間ほど確保できないというのが実状ですし、なにより明確なゴールがはっきりしていない中ずっとリハビリを続けていくという事に対してモチベーションを維持するのも容易ではないでしょう。
そんな中、二次的障害として
● 転倒による更なる機能低下
● 筋肉のこわばり、身体の硬さ、しびれ・痛みの増悪
● 廃用症候群の出現 など
これらの症状が出現したらどうでしょうか?「やってもらうリハビリ」に依存してしまうかもしれません。生きがいを失ってしまうかもしれません。生活そのものに喪失感を強く抱いてしまうかもしれません。そしてこういった精神面の不安定さが更なる二次的障害を引き起こしてしまいます。まさに悪循環です。そんな事態を避けるためにも、「維持」と「予防」は非常に重要になります。
【維持と予防の注意点】
では、どうすれば「維持・予防」ができるのでしょうか?麻痺の「回復」に必要なのは、「運動の回数・頻度」と言われます※5が、運動の量が減ると「維持」すらもできず、二次的障害が起こる可能性が高まります。「わかったよ、運動の量を減らさないように動けば、維持・予防ができるんでしょ!」と思われるかもしれませんが、そうではありません。『脳梗塞におけるリハビリの必要性』の項目で触れましたが、麻痺へのリハビリは、ただがむしゃらに頑張ればいい、動けばいい、筋肉を鍛えればいいわけではありません。間違った動き方ややり過ぎのような、身体に負担のかかる動き方をしてしまうと、努力したのに逆に悪くなってしまいます(二次的障害の出現)。つまり、運動の量が必要なのはもちろんですが、運動量を増やしても身体に負担のかからない方法でないと逆効果ということです。当センターでも「運動量や筋肉を落とさないように、筋トレをしている」という方がおられますが、やり方や負荷量が正しくない結果、筋肉のこわばりやしびれが悪化してしまった方もおられます。さらに「間違った動き方」は自分では気づけません。どうすれば「維持・予防」ができるのでしょうか?方法として、「専門職によるリハビリ」と「自分で行うリハビリ」があります。
保険を利用した「専門職によるリハビリ」
医療保険や介護保険を利用することで、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士といったリハビリの専門家によるリハビリを継続して行うことが可能です。
それぞれで受けられるサービス
医療保険 | 介護保険 |
---|---|
病院での外来リハビリ | デイケアでのリハビリ |
訪問リハビリ | 訪問リハビリ |
「維持」と「予防」を目的としたリハビリでは、以下のようなことを行ないます。
● 運動量の維持:歩行練習、マシントレーニング、自転車
● 身体機能の維持:外来や訪問リハビリでの徒手療法、
● 動作能力の維持:動作訓練 など
麻痺に対するリハビリでは、やり過ぎが症状の悪化を招いてしまう可能性がありますが、専門職が運動量や負荷量の調整、および身体の使い方といった生活指導を行ってくれます。身体の理解者になって頂けるのではないでしょうか。
運動の習慣付けなどの「自分で行うリハビリ」
専門職によるリハビリも大切ですが、生活期(慢性期)のリハビリで何より重要なのは、主体性を持って自分でリハビリを行うということです。入院期間中は毎日のようにリハビリを行っていましたが、在宅へ退院してからはそうはいきません。専門的なリハビリを受けられるのは多くても週に数回程度となるため、生活の中でいかに運動量を維持できるかということが将来に大きく影響してきます。自分で行うリハビリが重要と言いましたが、それは筋トレ等の運動のみを指しているわけではありません。生活の中での役割や趣味活動も立派な運動のひとつです。
● 掃除
● 食器洗い
● 洗濯物干し
● ウォーキング
● 小旅行
さらに、家事などの役割や趣味は、筋トレよりも身体に負担がかかりにくいため、二次的障害の予防をしやすいというメリットがあると考えます。つまり、自分にとって楽しみながら無理なく行えることを続けるという事が、実は習慣化・継続化しやすい最適なリハビリになると考えましょう。
③ 「更なる改善」に対するリハビリ
在宅復帰後、復職後や趣味の再開後、多くの方が改めて現状の身体機能の不便さを再認識し、身体機能や動作能力をもっと改善させたいと望まれます。当センターを利用されている方は、下記のような想いを抱かれています。
● 手足がもっと動くようになりたい
● 手足をもっと滑らかに動かしたい
● もっと健常者に近い姿で歩けるようになりたい
● 病人のように見られたくない
● 病前のようにバリバリ仕事をしたい
● 以前と同じように趣味を楽しみたい
「維持」や「予防」のリハビリはもちろんですが、それ以上にもっと回復したいと願うのは自然なこと。もちろん、しっかりと目的を持ちながら意欲的にリハビリを行なえば、発症後どのくらい期間が経過していたとしても機能が回復できる可能性はゼロではありません。
「更なる機能改善」に繋げていくためには、
● 趣味の再開・獲得や運動習慣の改善などの「自分で行うリハビリ」
● 保険下および自費での「専門職によるリハビリ」
を積極的に行っていく必要があります。
趣味の再開・獲得や運動習慣の改善などの「自分で行うリハビリ」
身体機能を向上させるためには、専門家と一緒に取り組むリハビリは必要不可欠です。しかしながら、とりわけ生活期(慢性期)のリハビリにおいては、それのみで身体機能の更なる回復を望むのは困難であると言わざるを得ません。脳梗塞後の機能回復には
● 質の高い専門的なリハビリ
● 高頻度で継続的に行うリハビリ
この2つが必須になるわけですが、生活期(慢性期)に脳の神経ネットワークを再構築する上で最も重要なのは「運動の回数・頻度」です※5。いくら質の高いリハビリを行なえたとしても、少ない頻度では中々効果に繋がりません。
つまり、生活の中で時間を占める割合が高い趣味や運動習慣といった「自分で行うリハビリ」の追加や改善が長期的に見た機能改善に効果的であると考えられるのです。
また趣味の場面では「もっと上手になりたい、これができるようになりたい」「やった、できた!楽しい、気持ちいい」という気持ちが沸き上がりやすいと思います。このようなモチベーションの高さは運動機能回復に大きく影響するということも脳科学的に証明されています※6。つまり、楽しみながら続けられる趣味のような「自分で行うリハビリ」は、身体機能や動作能力をさらに改善させる可能性を多く秘めていると言えます。
保険下および自費での「専門職によるリハビリ」
「自分で行うリハビリ」が重要と述べましたが、改善に向けたリハビリを行う際は
● 身体に負担がかかり過ぎないように負荷量を調節して行うこと
● 正しい方法で行うこと
● 正しい意識の向け方で行うこと
● 機能に応じて適切にリハビリ内容を調節していくこと
を考慮できれば、より効率的に改善が見込めると考えられます。そのためには、専門的な知識を持った理学療法士や作業療法士、言語聴覚士のアドバイスを受けながらリハビリを進めていく方が効果的と言えます。発症から時間の経ってしまった片麻痺であっても、正しい方法で高いモチベーションを持ちながら長期的にリハビリを続けることで、少しずつですが身体機能・動作能力は向上させることが可能となるのです。
脳梗塞発症後のリハビリを行う上でのポイント
ここからは、今までの内容も踏まえつつ脳梗塞発症後のリハビリを行う上でのポイントについてお話させて頂きます。脳梗塞発症後のリハビリを効果的かつ効率的に行なうためには、
● 発症後早期にリハビリを開始すること
● リハビリの質と量を確保すること
● バランスの良いリハビリを行うこと
これら3点が非常に重要になります。以下で詳細について述べていきます。
発症後早期にリハビリを開始する
脳梗塞に対するリハビリを開始するのであれば、少しでも早い方が良いと言われています。その理由は、脳卒中の機能回復は発症初期ほど良好で時間の経過とともに緩徐になる事が多いと言われているからに他なりません※7。また、リハビリを開始する時期が遅くなると廃用症候群をはじめとした二次的障害の影響を受けやすくなるため、機能回復に更なる時間を要することになりかねません。したがって、少しでも早い時期からいかに効果的なリハビリを出来るかどうかという事が身体機能・動作能力の最終的な伸びしろを決めるひとつの指標にもなってくると言えます。
リハビリの量と質が大切
こちらに関しては本記事でも強調して皆様にお伝えしている部分ではありますが、リハビリで大切なのはとにかく「質」と「量」です。身体機能や動作能力の回復は「脳の可塑性」によるところが大きいのですが、脳の可塑性には頻度依存性、環境依存性という性質があります。これはつまり、「たくさんリハビリを行うこと」と「質の高いリハビリを行うこと」で、より脳の可塑性が促通される、機能の回復が促されるということを意味します。どのくらいの頻度で、どのくらいの時間、どんなリハビリを行ったか・・・結果としてこれら全てがリハビリの効果として現れます。
バランスのよいリハビリが大切
バランスのよいリハビリというのは、麻痺側と非麻痺側をバランスよく使うリハビリ、という意味です。脳梗塞で生じた片麻痺は、全身の非対称性を強め、非麻痺側の過剰努力を生じやすくするため、これらをいかに抑制しながらリハビリを行えるかという点が焦点になってきます。
脳には「半球間抑制」という性質があります(上の図)。これは分かりやすく言えば、左右の脳がお互い過剰に働き過ぎないように抑制し合っているという性質なんですが、例えば、図の右側のように右脳梗塞によって右の脳が損傷を受けると、この半球間抑制が働かなくなり、損傷を受けていない左の脳がより一層過剰に働いてしまいます。その結果、ただでさえ非麻痺側の右手足を使いがちなところに加え、脳の働きとしても右手足を使うよう促してくるので、体感的には右手足ばかりに力が入り、麻痺している左手足が上手く使えないという現象を助長していきます。
リハビリでは、こういった脳の機能特性としての背景も考慮しつつ麻痺側と非麻痺側をバランスよく使う意識を持つ必要があります。
よく、がんがん筋肉を鍛えて筋力をつけなければ・・・と筋トレに躍起になる方もいらっしゃいますが、強い過負荷の場合は、非麻痺側をたくさん使わざる負えないため半球間抑制を強めてしまう可能性があります。その結果、身体のアンバランスさや非対称性を助長する結果になり兼ねません。もちろん筋トレ自体はリハビリとして大切ですが、こういった側面にも意識を向け、リハビリに取り組みましょう。
脳梗塞のリハビリに関するよくある質問
脳梗塞のリハビリに関して、お客様からよくある質問を以下で答えさせて頂きます。
病院などのリハビリはどれくらいの時間行うのが普通なの?
「関わる職種」「リハビリが受けられる期間」「時期別によるリハビリ時間」を紹介します。
・関わる職種
症状に合わせて理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)の3つ職種が関
わります。症状によっては、1つの職種しか関わらないこともあります。
・リハビリが受けられる期間
脳出血や脳梗塞などの脳卒中の場合、発症から最大150日(約5か月)、高次脳機能障害と診断された場合は最大180日(約6か月)間は、病院で毎日リハビリが受けられます。しかし、その期間まで入院されないことが多く、退院された場合は介護保険サービスや自費を利用しリハビリを受けられる場所を探す必要があります。
・急性期(発症~約1か月以内)のリハビリ時間
法律上は、発症から60日以内は1日合計最大180分(3時間)のリハビリを毎日受けることが可能です。ただし、急性期の場合は、全身状態によりリハビリができるか否かがリハビリ時間に関わってきます。状態が安定しないうちは1回20分程度、ある程度積極的なリハビリが出来るようになれば1回1時間以上のリハビリを行う場合もあります。
また、ご家族様の中には「家族がリハビリに口を出さない方がいいのか?」と迷われている方もいらっしゃるかと思います。一番大切なのはその声掛けが、「ご本人様にとってモチベーションを挙げる声掛けになっているか」どうかだと思います。ご本人様は、脳梗塞になったことで精神的に落ち込んでしまい、落胆や不安や焦りがすでにある状態です。そのような心情の中では、些細な言葉が勇気づけることもあれば、不安や焦りに拍車をかけることもあります。ご本人様が今、どのような心情にあるのかを考えて頂き、それにあった声掛けをして頂けると嬉しいです。脳梗塞の方がどのような心情になる傾向があるのか(障害の受容過程)を『脳梗塞急性期の症状と治療、相談窓口について』の記事で記載していますので、参考にして頂ければ幸いです。
・回復期(発症2週間~約150日)のリハビリ時間
基本は発症から60日間は1日合計最大180分(3時間)、それ以降は1日合計最大120分(2時間)のリハビリを毎日受けることが可能です。
・生活期(回復期病院を退院後~)のリハビリ時間
回復期病院から退院すると、入院時に比べリハビリの時間や回数が減ってしまいます。リハビリ時間や回数は、介護保険サービスや利用施設により異なりますが、回復期病院のように毎日受けることは出来なくなります。週に1~2回の方が多いです。退院後のリハビリ場所は、「介護保険サービスによるリハビリ(介護老人保健施設などの施設でのリハビリ、デイサービスなどの通所リハビリ、訪問リハビリなど)」、「医療保険によるリハビリ(外来リハビリ)」、「保険は利用できない自費による自費リハビリ」があります。
① 介護保険サービスによるリハビリの場合
介護保険サービスを利用するには、まず介護保険の申請が必要となります。手続きの詳細は、『脳梗塞の退院後の生活~安心して家に帰るためのポイント~』の記事で記載していますので、ご参考にしてください。
リハビリ時間は、場所によりますが20分~1時間と幅があり、20分のところの方が多いです。また、理学療法士などのセラピストから直接リハビリを受けるのではなく、マシンを使った運動が主体のところもあります。運動の機会を作りたいのか、麻痺の改善を目指したいのかなど、目標を明確にして頂きそれに合わせた場所を選ぶことが大切となります。
② 医療保険によるリハビリの場合
外来リハビリを受けられる病院を探す必要があります。利用する場合は、医療保険と介護保険を両方使うことが法律上は基本的には不可能なので、注意が必要です。詳しくは担当のケアマネージャーに相談してください。
③ 自費による自費リハビリの場合
保険を利用できない分、料金は高くなってしまいますが、時間(1時間以上)は長く受けることが可能です。質に関しては、それぞれの施設により特徴が違いますので、ご本人様にあったリハビリを選択して頂くと良いと思います。多くの場合は体験がありますので、一度体験してみてください。
病院でのリハビリ期間がない(又は短い)為、麻痺が残ったままで退院後どうしたらよいのか?
一番理想的なのは、急性期病院・回復期病院でリハビリを受けられる期間(150日間)を目いっぱい利用して頂くことです。とは言え、麻痺に対するリハビリは、150日のリハビリ期間以降も必要になります。1つ前の質問の中の『生活期(回復期病院を退院後~)のリハビリ時間』の記載を参考にしてください。
早期に退院して社会復帰する方がリハビリになるの?
早期退院にはメリットとデメリットがあり、人により違いますので、ご参考にしてください。個人的には、退院後では圧倒的にリハビリ時間・回数が減ってしまうので、回復期病院でリハビリが受けられる期間(150~180日)は、最大限活用してリハビリに励んで頂いた方が良いかと思います。しかし、以下に記載するような精神的な負担が大きい場合は、リハビリが効果的に進まないのも事実です。中には早期退院した後にリハビリ回数が減ることを知り、後悔されている方もいらっしゃいますので、デメリットを理解した上で判断して頂きたいと思います。
メリット
□自宅に戻ることで精神的に安定する(心が安らぐ)
⇒人によっては、病院生活がただただストレスになり、リハビリが進まない方、うつ傾向
となってしまう方、認知症が進んでしまう方がおられます。
□自宅に戻る、あるいは復職することで具体的な目標が立ち、生きる目標が明確となる。結果的にモチベーションが上がり、リハビリが効率的に進む。
⇒病院生活の中では、中々目標が明確にならずモチベーションが上がらず、生きる活力が低下してしまう方もおられます。
□在宅では、家事などの身の回りのことを自分でする必要がある方の場合、自発的になり、家事がリハビリとなる。
⇒病院では、職員が身の回りの世話をして頂けるため、リハビリ時間以外はベッド上で過ごすことが多く活動量が少ない方もおられます。
デメリット
□入院中は毎日最大3時間のリハビリがあるが、退院後はリハビリの回数や時間が減る。その影響で、退院後は身体機能が向上しづらくなる場合がある。
⇒麻痺の改善や身体機能が向上するには、リハビリ回数・時間は大きな影響を占めるため、入院中の方が身体機能の向上は見込みやすいです。退院後は明らかにリハビリ回数や時間は減るため、自主的に生活の中で動く習慣を作れていないと、退院後運動をしなくなる方が多いです。退院時に一番身体機能が良く、日が経つにつれて運動量が減り、体が硬くなる方も多いです。
□回復段階である発症から6か月以内の期間に積極的なリハビリが出来なくなる。
⇒一番回復しやすいのは発症から6か月以内と言われており、回復期病院の期間がとても貴重になるのは事実です。その期間に回数・時間・質の伴ったリハビリを行うのが一番効率的と言えます。
□麻痺している手足を生活の中で使う習慣、あるいは使える状態で退院しないと、退院後は
使用しない可能性が高い。
⇒生活していれば嫌でも麻痺している手足を使うようになると思われる方もおられるかもしれませんが、生活するので精一杯となり徐々に使えなくなる方が多いです。
家族でもできるリハビリなどはありますか?
もちろんあります。麻痺になると、『痙縮(けいしゅく)』と言われる筋肉が硬くなる症状があります。また、腰や麻痺していない側の手足が、麻痺側をかばおうとして使い過ぎで筋肉が硬くなってしまいます。動かしやすさを維持するには、麻痺している側もしていない側も身体を軟らかく保つ(関節や筋肉を軟らかくする)ことがとても大切になります。方法としては、ストレッチやマッサージ、筋膜リリースなどがあります。ただ、気を付けて頂きたいのは、ご本人様よりご家族様が頑張ってしまい、ご本人様が依存的になってしまうことです。あくまでも自分で良くなりたいと思わないと、脳は変わろうとしてくれません。『やるのはあくまでもご本人様』というのをご本人様およびご家族様も念頭に置いて頂き、できることは自分でやって頂く習慣を付けてください。ただ、心のケアはご本人様ではできないのでご家族様にお願いしたいです。脳梗塞では、身体だけではなく、むしろ心の方が疲れてしまう方が多いように思います。なので、心のケアも大切であるということを理解して頂き、寄り添い、話を聞いて頂けると嬉しいです。
脳梗塞リハビリBOT静岡のリハビリの特徴
以下が脳梗塞リハビリBOT静岡の特徴となります。
□リハビリ難民(リハビリを受けたくても受ける場所がない方)の救済を目標に、自費のリハビリを提供しています。自費なので保険対象外となってしまいます。
□機械ではなく、セラピストの手で直接身体に触れ、刺激を与え改善を目指します(徒手療法と呼ばれます)。
□時間は1回90分、週2回、合計16回実施することで、回復に必要なリハビリ時間は確保しています。
□1回のリハビリでの効果にこだわっているため、リハビリ前後で動画を比較します。それにより、お客様と目標を明確にし、改善の実感を大切にしています。最終的には、1回の効果を16回積み重ねることで、『行為の改善』を目指します。
□全身から行為の改善を目指すため、麻痺側、麻痺していない側の両方にリハビリを実施します。
□ただ麻痺している側を動かすのではなく、動きやすい状況を作り(姿勢、感覚に対するリハビリ)、麻痺の運動を練習します。
□「リハビリを一生続けないといけない」と思う方が多いので、『生きがいを達成するためにリハビリを行う』という考えを推奨しています。「リハビリがないと不安で生きていけない」から卒業し、『生きがいを見つけることが生きる糧となり、リハビリになる』を目指しています。当施設のリハビリが、生きがいを見つけるきっかけとなることを目指しています。
(参考・引用)
※1 医師と患者をつなぐ医療・ヘルスケアプラットフォーム.https://medicalnote.jp/contents/160219-031-VZ
※2 脳卒中リハビリテーションの進め方.急性期リハビリテーションhttps://www.jsts.gr.jp/guideline/283_286.pdf
※3 集中治療における早期リハビリテーションhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrcr/30/1/30_71/_html/-char/ja
※4 回復期における神経可塑性のメカニズムhttps://ccrajapan.jp/2018/10/14/plasticity2/
※5 慢性期における神経可塑性のメカニズムhttps://ccrajapan.jp/2018/11/10/plasticity3/
※6 “やる気や頑張り”がリハビリテーションによる運動機能回復に大切であることを脳科学的に証明https://www.amed.go.jp/news/release_20151002.html
※7 松元 秀次.日医大医会誌 2019; 15(4) 201.特集〔心原性脳梗塞の治療と予防〕脳梗塞のリハビリテーション治療https://www.jstage.jst.go.jp/article/manms/15/4/15_201/_pdf
ライター
寺澤 慶大
理学療法士
この記事の監修者
保本 夢土
理学療法士
経歴:2008年に鈴鹿医療科学大学 理学療法学科を卒業し、理学療法士国家資格を取得。同年~2018年まで静岡県内の療養期の病院、介護老人保健施設に勤務し、慢性期の患者様に携わる。その中で脳血管障害に対する治療を中心に学び、脳卒中患者様を専門に携わりたいという思いから、2019年に脳梗塞リハビリBOT静岡に勤務。運動麻痺の改善に最善を尽くすこと、お客様の身体および精神的な悩みを共有し、少しでも表情が明るくなるよう心がけています。
急性期脳神経外科病院での10年間の臨床経験をはじめ、デイケア、デイサービス等の介護分野での経験や自費診療、スポーツトレーナー活動など幅広い分野でのリハビリ業務を経験。現在は整形外科クリニックで運動器疾患に悩む患者様のリハビリに携わっている。「病名に捉われず、その人の本質的な運動機能を改善するリハビリを提供する」がモットー。理学療法士としての仕事は「趣味」であり「天職」。多角的な視野や思考を大切に考えており、常に新しい知見や考え方を取り入れながら日々理学療法士としての知識・技術を高めるべく研鑽を続けている。また、世の中の健康リテラシーを高めるためWebライターとしても活動。理学療法士としての知識や経験を元に、医療や介護に関する情報を発信している。
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