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2024.12.17 脳梗塞とは 脳梗塞の治療 脳梗塞の再発予防
脳梗塞による認知症~脳血管性認知症について~
脳血管性認知症は、脳の血流障害によって起こる認知症の一種で、日本でも高齢化に伴い増加が懸念されています。脳梗塞や脳出血が原因で発症することが多く、アルツハイマー型認知症に次いで認知症全体の20~30%を占めています。この記事では、「脳血管性認知症」の定義から、症状、診断方法、治療と予防法について詳しく解説します。
1.脳血管性認知症とは?
脳血管性認知症(血管性認知症)は、脳血管疾患によって脳血流が阻害され、酸素や栄養が不足することで脳の特定の領域が損傷を受け、認知機能が低下する状態を指します。
脳血管性認知症の主な原因となる疾患は以下の通りです。
- ・脳梗塞:脳の血管が血栓や栓塞で止まり、血流が途切れてしまう状態。
- ・脳出血:血管の破裂によって脳内に出血が起こっている状態。
- ・一過性脳虚血発作(TIA): 短時間だけ血流が遮断され、一時的に脳の機能が低下する状態。
TIAは60代~70代の男性に多く発症すると言われています。
⇒一過性脳虚血発作について詳しく知りたい方はコチラ
2.脳血管性認知症の症状
脳血管性認知症の症状は、損傷を受けた脳の部位や範囲に応じて異なります。
2.1 記憶障害
認知症という名称の通り、主な症状となるのは記憶障害です。日常の中で、以下のような症状が出てくることがあります。
- ・最近の出来事を思い出せない。
- ・日常生活でのちょっとした約束を忘れる。
- ・アルツハイマー型認知症とは異なり、長期記憶は比較的保たれることが多い。
2.2 注意力や判断力の低下
脳の血流障害はすなわち脳機能の障害を意味します。注意力や判断力など、普段当たり前にこなしていることが、途端にできなくなったりして、生活に支障を来たすことがあります。
- ・日常生活での意思決定や、計画的な行動が困難になる。
- ・お金の管理や買い物でミスが増える。
- ・集中できずに、ぼーっとしたりする。
2.3 情緒や性格の変化
情緒や性格といった面でも、脳の機能が正常に機能しなくなると変化が生じてきます。
- ・無関心や刺激の低下(アパシー)が見られる。
- ・無気力になり、抑うつ症状がみられる。
- ・些細なことで怒ったり、涙が出るなど感情の不安定さが見られる。
これらの症状は加齢による抑うつなどと混同されやすいため、その他の症状と合わせて見ていく必要があります。
2.4 その他の身体症状
上記以外にも、脳機能の低下によって以下のような症状が現れることがあります。
- ・片側の手足の麻痺や筋力低下など、脳血管障害による症状。
- ・歩行障害やふらつき。
- ・言語障害(言葉が出てこない、理解が難しい)。
- ・尿失禁。
どの症状も単体では別の疾患や他の認知症、加齢に伴う機能低下と区別がつきにくい場合もあるため、生活の様々な場面で困りごとが増えていないか、という点で注意をしていく必要があります。
3.脳血管性認知症の原因と発症の科学
脳血管性認知症の発症には、以下のメカニズムが関与しています。
3.1 脳梗塞による直接的な損傷
脳梗塞が発生すると、詰まった血管の先にある脳組織が酸素や栄養を受け取らず、壊死します。これが記憶をつかさどる海馬や、判断力に関わる前頭葉で発症すると、認知機能の低下として現われます。
3.2 脳血流の全体的な低下
小さな脳梗塞や血管の損傷が起こることで、脳全体の血流が低下し、神経細胞が十分に働かなくなります。この慢性的な脳血流不足が、徐々に認知機能を低下させる要因となります。
3.3 再発のリスク
脳梗塞や脳出血を繰り返すことで、損傷が多発するとともに、認知症が進行しやすくなります。また、動脈硬化や心房細動、糖尿病、高血圧といった基礎疾患がある場合、再発リスクが懸念されます。
4.脳血管性認知症の診断
診断には、以下のプロセスが用いられます:
4.1 医療面接
患者本人や家族から、認知機能の変化や日常生活での困難を聞きます。
4.2 神経心理検査
- ・MMSE(Mini-Mental State testing)、HDS-R(長谷川式認知症スケール)などを用いて、記憶力、計算力、言語能力などを評価します。
4.3 画像検査
- ・MRIやCTスキャン:脳梗塞や脳出血の有無、損傷部位の特定。
- ・SPECTやPET:脳血流や代謝の状態を評価します。
5.脳血管性認知症の治療と予防
脳血管性認知症の治療は、認知症の進行を踏まえて、基礎疾患の管理を行うことが重要です。
5.1 脳血管性認知症の治療法
1.基礎疾患の管理
- ・高血圧、糖尿病、高脂血症を正しく治療する。
- ・心房細動などの心疾患がある場合、抗凝固療法を行います。
2.抗血小板薬や抗凝固薬の使用
- ・脳梗塞再発予防のために、アスピリンやワーファリンが処方されることがあります。
3.認知症への薬物治療
<コリンエステラーゼ阻害薬>
- ・ドネペジル(商品名:アリセプト)
- ・アルツハイマー型認知症に使用されるが、脳血管性認知症でも認知機能改善効果があるとされています。
- ・軽度~中等度の認知症に適用。
<NMDA受容体拮抗薬>
- ・メマンチン(商品名:メマリー)
- ・中等度~高度の認知症に適用。
- ・神経細胞の過剰な興奮を抑制し、認知機能の進行が遅くなります。
- ・一部の患者には、アルツハイマー型認知症治療薬(メマンチンなど)が使用される場合があります。
4.リハビリテーション
- ・理学療法や作業療法で運動や指先を使う作業、記憶や注意力を刺激するような課題を通じて、認知機能の改善を図示します。
<認知機能向上を目的としたリハビリ>
・記憶力と注意力の訓練
⇒カードゲーム、日記や予定など
・計算や文字書きのトレーニング
⇒簡単な計算問題や書き取り練習、脳トレーニングのアプリなど。
・会話やコミュニケーションの練習
⇒家族や介護者と日常会話をする習慣をつける、グループセラピーで他者と交流など。
・視覚・空間認知の訓練
⇒図形模写や積み木を使ったパズル。
<身体機能向上を目的としたリハビリ>
・関節可動域の維持、バランス訓練、筋力強化運動、歩行訓練
⇒身体を動かすことで、筋肉や関節からの感覚刺激で脳を賦活させ、脳血流量の増加を図ります。
<日常生活動作(ADL)の訓練>
・着替えや食事の練習
⇒ボタンやファスナーの練習、食事動作の訓練など。
・家事活動の練習
⇒簡単な料理、掃除、洗濯などを段階的に実施。
・金銭管理や買い物の練習
⇒模擬的な買い物や計算練習など。
<心理社会的リハビリ>
・趣味活動の導入
⇒絵画、手芸、園芸などの趣味活動をしながら心の安定を図る。
・グループ活動
⇒デイサービスでのグループリハビリに参加し、社会性を維持する。
・回想法
⇒過去の思い出を語ることで記憶を刺激し、自己肯定感を高める。
5.2 脳血管性認知症の予防策
脳血管性認知症の予防には、脳血管障害を防ぐ生活習慣の改善が重要です。 高血圧や糖尿病、脂質異常症を正しく管理していくことが重要になります。
- 健康的な生活習慣:
▶適度な運動…ウォーキングや水泳などの有酸素運動で筋肉量を維持して血流改善を図る。
▶バランスの取れた食事…野菜や果物、魚中心の食事で、塩分摂取量を1日6g以下に心がける。
▶禁煙・節酒…アルコールの量を控える。
▶十分な睡眠…良質な睡眠を確保し、脳の疲労回復を図る。
- 定期的な健康診断:
▶血圧や血糖、コレステロールを確認して動脈硬化や高血圧を早期発見し、治療する。
- ストレス管理:
▶ストレスによる基礎疾患の悪化を予防するため、リラックスできる習慣を作る。
6.家族や介護者へのアドバイス
脳血管性認知症の方を介護される場合、患者さんのペースを尊重しつつ、生活をサポートすることが大切です。機能面の変化を観察し、安全な生活環境を整備しましょう。感情の変化には共感を示し、忍耐強く接することも重要です。また、介護疲れを防ぐために地域の支援サービスを活用し、家族自身の心身の健康にも十分配慮してください。
以下、具体的な方法について記載していますので、参考にしてみてください。
- 専門医のサポートを受ける:地域の認知症サポート医介護や施設を活用する。
- 本人の意思を尊重する:本人の意思を尊重し、日常生活を支援する。
- 介護者自身のケア:介護ストレスを軽減するために、休息や支援を求める。
- 心理的サポート:一人で抱え込まず、カウンセリングを受ける。
- 認知症カフェや家族会:同じ境遇の家族との交流や情報共有。
- 生活環境の整備支援:福祉用具のレンタルや介護保険サービスの調整など。
- 家族向け教育プログラム:認知症の理解を深めるための学びを受ける。
脳梗塞による脳血管性認知症は早期発見が重要
脳血管性認知症は、脳血管疾患による認知症の一形態で、特に脳梗塞との関連が深い疾患です。早期発見と適切な治療・予防により、進行を考えることが可能です。管理や健康的な生活習慣を心がけ、脳の健康を守ることが重要です。家族や周囲の支援も含めたケアが求められます。
あなた自身やご家族が脳梗塞か疑わしい症状を感じた場合は、すぐに医師の診察を受けることをお勧めします。