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脳梗塞リハビリBOT静岡のお知らせを随時更新していきます。
2020.09.07 脳梗塞の後遺症
脳梗塞後遺症 麻痺していない半身への影響 ~非麻痺側の色々な部位が痛くなる原因は何?~
この記事の監修者
保本 夢土
理学療法士
脳血管障害(脳梗塞や脳出血など)になると、障害された脳とは反対側の半身に運動の麻痺が生じます。麻痺した側を「麻痺側(まひそく)」、麻痺していない側を「非麻痺側(ひまひそく)」と呼びます。左片麻痺の場合は、右側の半身が非麻痺側となります。
左片麻痺の方の場合
これまで麻痺により非麻痺側の姿勢に対して影響がでることを紹介してきました。BOTに来店されるお客様の中には、非麻痺側の肩、肘、腰、膝やふくらはぎ、足の甲など麻痺していない側の体にも関わらず、色々な部位に痛みを訴えられます。非麻痺側に痛みがでると、『いい方の体も悪くなってきたんじゃないか?この先歩けなくなるのではないか?ほかの病気になったのではないか?以前のように生活しているのになぜ?どうしたらいいか分からない』など色々な不安を抱かれています。お医者さんに診てもらってもレントゲンやMRIなどの画像診断では問題がなく、原因が不明で中々診断をつけられないこともあります。その場合、『麻痺側をかばって、いい方の体に負担がかかっているのではないかな』と言われたりすることがあると思います。そうすると、『今後どのように体を使っていけばいいの?』という不安が生じます。
ですので、今回は…
1.『非麻痺側で痛みが出やすい部位はどこか?』
2.『痛みが出る原因は何が考えられるのか?』
3.『どのようなリハビリを行っていけば痛みが減る可能性があるのか?』
について紹介させて頂きます。もちろん、私が学んできた範囲ですので全てを網羅出来ているわけではありませんが、少しでも生活の中での不安が減り、今後良くなる見込みがある事、どのように自分の体に関わっていけばよいかの一助になれば嬉しく思います。
1.『非麻痺側で痛みが出やすい部位はどこか?』
下記がよく痛みを訴えられる部位となります。これら以外にももちろん起こる可能性があります。
2.『痛みが出る原因は何が考えられるのか?』
非麻痺側の半身は私たちが想像する以上に力が入り頑張っている状態(過剰努力とよく言われます)となっています。脳梗塞になると、麻痺が生じ、かつ非麻痺側の予測的姿勢制御が障害された中で何とか全身を使い一生懸命バランスを取りながら、非麻痺側の手足を中心に生活をしないといけません。片側の体が動かせない状態で上着を着たり、お茶碗を持たずご飯を食べたりしないといけなくなります。それを想像して頂くと、非麻痺側の手足の大変さが少しは想像つくと思います。とても手足が疲れることが予想できます。そうすると、同じ部位や筋肉ばかりに負担がかかってしまい痛みが出てしまいます。
では痛みは関節に出るのか?筋肉に出るのか?
そもそも、なぜ負担がかかると痛みがでるのでしょうか?
痛みは関節にも筋肉にもでる!
『負担がかかる』をイメージすると関節に対する印象がありますが、筋肉にも負担がかかりますので、関節にも筋肉にも痛みが出ます。今回は筋肉の痛みについて紹介します。『筋肉に負担がかかる』をイメージすると筋肉痛や肩凝りなどをイメージしませんか?それらは数日たてば痛みがなくなる、あるいは凝ってるけどそこまで痛くはなかったりしないでしょうか?普段やらないことを頑張って出た肩凝りは休んだり、揉めば少し楽になったり、一時的だったりしないでしょうか?
ですが、非麻痺側に起こる筋肉の痛みは、痛みの強さは凝りよりも強く、揉んでも中々良くならない、揉んだ後は少しは楽だけど動くとすぐに痛くなる、痛みがずっと続く、他のところも痛くなってくるなどの違いがあるように思います。
痛みの原因は、持続的筋収縮と微小循環障害の可能性
持続的筋収縮(じぞくてききんしゅうしゅく)とは、漢字の通り持続的に筋肉に力が入った状態が続くことを言います。簡単に言うと、「ずっと力が入った状態」です。
微小循環障害(びしょうじゅんかんしょうがい)とは、毛細血管やリンパ管など微小循環系と呼ばれる部分が障害を受け「流れが悪くなること」を言います。ある筋肉に持続的筋収縮が起こると、その周りの血管やリンパ管に循環障害が生じます。循環障害が生じることで、乳酸が貯まり痛みを発する物質が作られてしまい、痛みが生じると考えられています。つまり、負担がかかるから痛みがでるのではなく、負担がかかった結果、筋肉に常に力が入った状態が続き血液の流れが悪くなる事で痛みが出てしまうという事です。
(症状)
・筋肉が硬くなる、つっぱる
・ずっと凝っている
・押すと痛い
・動いても痛い
・むくむ …リンパ管の流れが悪くなるため
など
痛みが色んな部位に起こる理由は?痛みの場所が変わる理由は?
人により、バランスのとり方は様々なためどの部位の筋肉が一番頑張っているかで痛みの場所が異なります。また、筋肉は筋膜と呼ばれる膜で覆われており、筋膜は全身に繋がっています。みかんの身が筋肉で黄色い一番外側の皮が筋膜と思っていただけると分かりやすいと思います。つまり、ある一部の筋肉が硬くなると、それを包んでいる筋膜が硬くなります。そして、この筋膜を介して全身の筋肉に影響がでてしまいます。痛みの場所が変わったり増えたりするのも、筋膜が全身に繋がっているからであり、筋膜の繋がりの強い筋肉に痛みが生じやすくなります。
『どのようなリハビリを行っていけば痛みが減る可能性があるのか?』
痛みの原因が、持続的筋収縮と微小循環障害であると考えると、治療方針は、1.『筋肉を軟らかくする(力を抜く)こと』、2.『血液の流れを良くすること』となります。
1.筋肉を軟らかくする方法
・マッサージ(もむ)
・ストレッチ
・リラックス(入浴、睡眠、アロマ、音楽、ペットと触れ合う、風にあたる、心の許せる人とたわいもない話をする、気持ちのいいことをする、深呼吸など)
血液の流れを良くする方法
・運動(なんでもいいが頑張らずに楽にできる運動、体操、ヨガなど)
・入浴
・食事の工夫
など、方法は色々あると思います。普段の生活の中で気を付けることとすればまずは、リラックスできる時間、場所、人間関係を作ることが大切だと考えます。
ですが、そもそも非麻痺側ばかりで頑張ってしまうことが痛みのおおもとの原因であるので、①負担がかからないように体の使い方(動作)を変える、②負担がかからないような体を作るリハビリが必要となります。力を抜かせて血液の流れを良くするだけでは、またすぐに痛みがでることが多くありますが、まずは一人で出来ることから始めていくことが大切だと考えます。
今回は、非麻痺側に起こる痛みについて紹介させて頂きました。大切なのは、痛みの原因を知って頂き、生活の中で少しの時間でも良いので、リラックスして全身の力を抜く時間、『楽だな~』と思う時間を作って頂くことだと考えます。麻痺がある多くの方が知らない間に頑張りすぎていたり、頑張って生活するのが当たり前になっておられ、力を抜くことが難しくなっているように思います。もちろん、麻痺があるので頑張らないと生活はできないのですが、頑張りすぎになっていたり、頑張らなくても良い時(イスにもたれて座る、腰を曲げてだらりと座る時など)にも背筋を良くして頑張っておられる気がします。最初のうちは何が楽なのかが分からない方が多いですが、少しでも頑張らずに生活できるように関わっていければと思います。
【参考文献】
1)倉田 繁雄:整形外科領域における痛みに対する治療~徒手療法を中心に~
この記事の監修者
保本 夢土
理学療法士
経歴:2008年に鈴鹿医療科学大学 理学療法学科を卒業し、理学療法士国家資格を取得。同年~2018年まで静岡県内の療養期の病院、介護老人保健施設に勤務し、慢性期の患者様に携わる。その中で脳血管障害に対する治療を中心に学び、脳卒中患者様を専門に携わりたいという思いから、2019年に脳梗塞リハビリBOT静岡に勤務。運動麻痺の改善に最善を尽くすこと、お客様の身体および精神的な悩みを共有し、少しでも表情が明るくなるよう心がけています。